本日インタビューにお越しくださったのは、パーソナルメイクトレーナーの池内ひろこさんです。
個人として独立開業をしてから、もうすぐ2年になるといいます。
メイクをお客様に施すのではなく、「メイクのやり方」を教えることが中心のお仕事をしているそうですが、元々の職業はなんと丸の内にある監査法人でのお仕事だったそう。
Beauty Japan コンテスト(以下、BJコンテスト)のファイナリストとして日本大会に出場した際には「人生は"メイク"で変えられる」というテーマでのプレゼンテーションがありました。
自分の見た目のコンプレックスから「美容」の道へと進んだというひろこさん。
美しくなりたいと考えるすべての女性にとって大切な考え方を伺いました。
メイクをしている私だけが「私」?
── パーソナルメイクトレーナーというお仕事をされているそうですが、実際にはどのようなことをされているのですか?
ひろこ:お客様が自分自身でメイクができるように指導するお仕事になります。
そこで気をつけているのは、ただ外見を整えるものではなく、内面を引き出していく中でそれをどうメイクで表現するか、というポイントです。
メイクは外見を変えるだけのものと思われがちですが、私は「内面の一番外側が外見」と考えています。
つまり、外見は内面の一部ということです。
── メイクレッスンの中で「内面を引き出す」という考え方があるのは興味深いです。
ひろこ:私はよくお客様に「球体」の話をするんです。
内面の球体というものがあって、それはいくつもの層になっていて、その一番外側にピタっと張り付いているのが外見です。
その球体はいろいろな角度から見ることができるのですが、ほとんど人は太陽が当たっている面だけを見ようとします。
── 具体的に言うと、どういうことでしょうか?
ひろこ:メイクをしている自分だけが「自分」と思っているような状態がわかりやすいかなと思います。中にはアプリで加工した自分だけが「自分」と見なしている方もいます。
でも人ってデコボコした存在なので、光があたる部分もそうじゃない部分も自分だと受け入れることが大切なんじゃないかと考えています。
そういった背景もあり私のメイクレッスンでは、ご自身の内面を見つめていただくワークと、それを表現するためのメイクという構成でお伝えしています。
自分を受け入れられなかった過去
── ひろこさんはどのような経緯でパーソナルメイクトレーナーという道に進まれたのでしょうか。小さな頃から美容に関心が?
ひろこ:実はその反対で、見た目の部分で私はコンプレックスの塊だったんです。
小学5年生の頃の古い思い出にまでさかのぼるのですが、当時の私は背が高く、親の方針で髪型はショート、ニキビ顔に、キレ長の一重まぶたという見た目でした。
美容師さんには「男の子、女の子、どっち?」と聞かれてしまい、それからスカートが穿けなくなって、人から自分がどう見られるかを意識し始めました。当時はクラスでも男の子たちにイジメられてました。
── イジメられた、というのは…
ひろこ:ただ見ていただけなのに「睨まれた!」とか言われたりするんです。
私には睨んだという認識がなかったので、その時に初めて「目つきのせいだな…」と思うようになり、美容というよりは整形をしたいと考えるようになりましたね。
心境が変わったあるモデルとの出会い
── 外見のコンプレックスがあったというお話でしたが、なぜそこから「内面を表現するメイク」という考え方になったのですか?
ひろこ:私の考え方を一変させるキッカケとなった、ある海外の女性モデルさんがいるんです。
ウィニー・ハーロウさんという方なのですが、メディアでは「斑(まだら)肌のモデル」というような伝え方をしています。
黒人の方なのですが、小さな頃から肌の病気で、全身のところどころで色素が抜けてしまい、真っ白になっているんです。
ひろこ:彼女は肌のせいでイジメを受けたこともあるそうなのですが、その肌を世の中に公表して見せて、プロのモデルとして世界中のランウェイを歩くという姿勢に感銘を受けたんです。
外見よりも、その人の勇気というか。
自分を隠してしまえばコンプレックスになる。でもそれをさらけ出すことで美しさに変わるんだなと、その時に強く思ったんです。
これが私のパーソナルメイクトレーナーとしての考え方の原点です。
美容の道に立ちはだかった壁
── メイクのお仕事を志してからは、その道のりは順調だったのでしょうか?
ひろこ:大学受験の頃に、美容への道を一度見失ってしまう時期がありました。
高校時代はメイクをするようになり、髪の毛も伸ばし始めて「おしゃれ」に一度は目覚めたんです。
ただ進学を考える時期に入ると、親から「大学には行くように」という方針を出されケンカをするようになりました。私は美容系の専門学校に行きたいのにって。
── 最終的にどちらを選択することにしたんですか?
ひろこ:最後はまったく勉強もせず、学校にも行かないという状態で受験をして失敗。一浪することになります。
親からも大学さえ出れば専門学校にも行って良いという話でまとまったので、おしゃれの一切を封印し、勉強に専念することにします。
大学生になってからは、そのストレスから解放されてはじけるように好きなことへとことん時間とお金を使うようになるのですが、デートや飲み代、海外旅行に夢中になり、いつしか美容に対する熱も冷めてしまったんです。
── 美容に対する熱が冷めていた、というのは驚きました。でもそこからまた夢に向かうことになるわけですよね?
ひろこ:なぜ美容の道へ進みたかったのかを忘れてしまっていたんだと思います。
結局は内定がもらえたところにそのまま就職するわけなのですが、そこが東京丸の内にある監査法人で、秘書業務をしていました。
── 丸の内OL になられていたんですね!
ひろこ:そこでオトナの女性たちにたくさん触れるわけです。秘書の方々って本当にキレイなんですよ。
それに比べたら私ってすごい地味だなって思って。
そこで思い出すわけです。「そういえば私、自分の見た目にコンプレックスを持ったまま大人になってしまった…」ということに。
── 動機がよみがえってきたんですね。
ひろこ:社会人として3年目に入り、時間にも余裕ができたタイミングで自分のためにメイクを習い始めました。そこがスタートです。
18:00 に仕事を終えて、23:00 までレッスン。朝の6:00 にまた起きて出社。この繰り返しを1年半以上続けました。
こうして夢中になって取り組むようになったメイクを、今度はお仕事にしてみようと思い、美容部員(BA)へ転職を決意しました。
美容の世界で感じた「理想と現実」
── ついに念願の美容の世界へと足を踏み入れるわけですね。
ひろこ:女性を美しくする仕事がしたいと思い、とある海外化粧品ブランドの美容部員( BA )として働くようになります。
スクールで身につけた技術を使って、やっと望んでいた仕事に就けると思うと嬉しかったですね。「好きを仕事に」の第一歩ですよね。
ところが実際に働いてみると、売上を上げることだけが目的の場所だということがわかり違和感を覚えるようになってしまったんです。
── 理想と現実のギャップが生じてしまったと。
ひろこ:そしてもうひとつ、化粧品の販売だけでは「女性を美しくする」ということには繋がらないことにも気づいてしまいました。
あるお客様が「眉ペンシル」を購入してくださったことがあるんです。その方がまた数ヶ月後にいらしてくれたのですが、ぜんぜん眉がキレイになっていなかったんです。
高い化粧品さえ使えばキレイになれるという「考え方」にも原因があると思いましたし、メイクを自宅で再現できるような「売り方」ができていないことにも問題があると気づかされたんです。
── お客様のことを考えてもっと提案できることがあると気づいたんですね。
ひろこ:メイクで女性がキレイになるためには「好きで・似合っていて・再現できる」が重なる必要があると私は考えています。
自分が好きじゃないと自信をもって外に出られないし、似合ってて好きでも技術がないと再現できません。好きで技術があっても、その場のTPOに合っていなければマナーやモラルを問われてしまいます。
それを伝えない限り、私は自分にウソをついた働き方をすることになると思い、そうではない生き方として「独立」の道を覚悟したんです。
独立、そしてBJコンテストへ
── いざ独立してみて、お仕事の仕方はどう変わりましたか?
ひろこ:独立して1年半になるのですが(2019.8 時点)、思い描いていた自分の姿とはまったく異なり、とにかくつらいことばかりでした。
最初の数か月は良かったんです。貯金もありましたし、自分が100% やりたいことに集中できるので夢心地でした。
でもすぐにお金も尽きてしまい、自分の進んでいる方向もわからなくなり、暗中模索の中、ついに貯金が3万円を切り「生きていけない…」と思い始めたんです。
── 自分の生活が、先に危ぶまれる状況になってしまったと。
ひろこ:好きを仕事にするために会社を辞めて、みんなにも応援されて威勢よく飛び出したのに、私はなんて無様なんだ…と自己嫌悪で毎日泣いてました。
買えていたものも買えなくなり、1日の食費も数百円。
夜は眠れないし、だからといって朝も起きれず。やがて帯状疱疹になってしまって、こんなに弱い身体になってしまったとさらに自己嫌悪を繰り返していました。
── その状況を抜け出すキッカケは何だったんですか?
ひろこ:独立して半年が経った頃、ようやく初めてお客様との契約を結ぶことができたんです。
それがすごく嬉しくて、そのお客様のことも大好きになって、レッスンも楽しみになり、より工夫を重ねるようになりました。
目の前のお客様に一生懸命になるうちに、少しずつお客様が増えていったんです。
と同時に、BJコンテストへ参加したのもちょうどその頃で、このコンテストをキッカケにまたお仕事の輪が大きく広がっていくようになりました。
BJコンテストが私を大きく変えた
── BJコンテストへの参加がお仕事にも変化を与えたということでしたが、具体的にはどういうことでしょうか?
ひろこ:ファイナリストに選ばれると、さまざまなレッスンを受けることになるんです。その中にSNS関連のものがありました。
私はそれまでSNSに自分のことを出したくないって考えていました。人からどんな風に見られるか、思われるかが怖かったんです。
女優さんやモデルさんだけが投稿するものだと思っていたので。
── 今ではインスタグラムやフェイスブックを始め、さまざまなところで発信をされていますよね。
ひろこ:BJコンテストを通して一緒に頑張ってきた身近な人たちが発信するのをみて「私もやっていいんだ!」という許可が自分の中で下りたんです。
そこから素直にSNSへ投稿する勇気が出てきました。
メイクへの想いや仕事のこと、日常についても気軽に発信できるようになり、それに共感してくれる人たちが集まってくるようになり以前よりもお仕事がうまく回るようになりました。
── ウォーキングやプレゼンテーションなどもBJコンテストでは用意されていましたが、自分を使った表現、発信はやってみてどうでしたか?
ひろこ:人前で何かを伝えたりするのが苦手な性分で、ウォーキングに関しては不安しかありませんでした(笑)
自宅やマンションの駐車場でウォーキングの様子を撮影して、その動画をリョウコ先生に見てもらったりしながら練習してましたね。
── プレイベートの時間にも特訓をされていたんですね!
ひろこ:こうして経験を通して得られたことは、ひとつは私自身がやはり職人気質なので業界の細かい話などは得意だけれど、言葉や動作で人を魅了するのは苦手だなということでした。
そしてもうひとつ、苦手と思う感情の先に、表現や発信への「憧れ」や「挑戦したい」という気持ちが眠っていたことにも気がつきました。
内面に気づく、内面が引き出されていくことの大切さを改めて実感しました。
読者へのメッセージ
── では最後に、BJコンテストを含め、自分の夢や目標のために挑戦したいと考えている方へメッセージをお願いします。
ひろこ:キッカケは何でもいいので、自分の可能性を信じてください。
人はデコボコした存在で、自分で自分を受け入れられない部分もあるかもしれない。でもそういう部分も含めて私たちは美しいから、美しくなろうとする姿そのものが他人や社会に勇気を与えます。
私が美しいと考える女性は、個性をコンプレックスとしてではなく、魅力として捉えている女性です。
美しさや魅力にはいろいろな面があって、必ずしも絶対的な「美しさ」一つではありません。人の数、そしてその人の中にもたくさんの「美しさ」が存在します。
その美しさに気づいて、いろんな魅力を愛していってほしいなと思います。
がんばってください、応援してます!
■池内 ひろこ (Ikeuchi Hiroko)
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