2019年のBJ(ビューティージャパン)グランドファイナリストに選ばれた平井希京(ひらい・ききょう)さん。
見た目の美しさだけでなく、女性のキャリアにも注目したコンテストだったということが出場の決め手だったといいます。
モデル活動のほか、インスタグラムのコンサルティングなどもおこなう希京さんですが、そのメインの活動は金融教育事業を軸にしたアドバイザー。
金融、と聞くと保険や不動産などの金融商材を販売する事業者のイメージがある方もいるかもしれませんが、希京さんの場合は
「日本人の金融知識はゼロ。そこをイチに引き上げる教育」
をコンセプトに活動。
これからの私たち(小学生、中学生、高校生、大学生、そして子育て世代)はどのように金融を学び、リテラシー(※)を上げるべきなのか?
モデル、インスタコンサル、元は学校教員でもあったという複数の視点を持つ希京さんならではの感性と共に記事をお送りしたいと思います。
※リテラシー …理解、応用、活用力、の意
日本人の金融リテラシーはなぜ低い?
── さまざまな活動を通して活躍している希京さんですが、メインとなる金融教育事業を始めようと思ったキッカケは何だったのでしょうか?
希京:現在の仕事のルーツは、今から約7年前に遡ります。
当時商業科の高校教師だった私。インターネットで手軽にモノが買える時代に、なぜか中間流通を中心に授業をしなければならない現実。
お小遣い帳すらつけたことがない生徒たちに、なぜかいきなり簿記を先に教えなければならない。貨幣の歴史については試験で点数つけられないから、授業で取り上げることができない…。
挙げ出したらキリがないほど、私は当時の環境に対してモヤモヤしてました。そんな時に出会った、とある「経済セミナー」で私の人生が変わりました。
当時の勤務地である静岡県の浜松市から東京へ、仕事を定時に上がり新幹線に飛び乗って通っていました。帰りは翌日始発の新幹線へ。
その結果か、教員2年目にして授業支持率が90%台になりました。私が勤めていた学校はちょっと変わっていて、生徒が先生を選べる学校だったんです。
── 商業科の教育現場でもお金に対するリテラシー向上には限界があるように感じますが、なぜ日本人のリテラシーはこんなにも低いのでしょうか?
希京:こうした公の記事ではお伝えすることができないようなことも含め、さまざまな理由が絡みあっているのが日本の現状です。
ただ少なくとも、高度経済成長に則って、お金を郵貯や銀行に預けておけば勝手にお金が増えていったという旧世代の知識や考え方、風習が今にそのまま来てしまっているというのはあると思います。
2019年6月に金融庁が公表した「老後資金、2000万円問題」というのが先日もありましたが、そういったことで揺れるような個人の意識こそに問題があるなと感じています。
これからの世代に金融リテラシーを伝えるために
── 高校の教師だった希京さんが、現在は金融教育のアドバイザーをしていますが、独立する決め手となったできごとは何でしたか?
希京:これまでの私の職務経歴とも関係しているのですが、元々商業科出身で大学も経営学部を出ている私は、まず新卒で「高校の先生」になります。
しかし、教員としてただ働くことにあぐらをかいていたことに情けなさを感じていたこともあり2年ほどで退職することになるんです。
スマートフォントレーナーのお仕事を1年ほどして、次に保険屋さんのお仕事を3年ほど続けます。このときに、日本の金融業界の現状や、日本人の金融リテラシーの低さなどを知ることになります。
そうこうしているうちに、当時16~17歳ぐらいだった教え子たちが21~22歳になっていたんですね。
「生徒が先生を選べる」という変わった学校だったこともあり、私は今でも生徒と年に何回かは交流してお茶を飲んだりするのですが、その時に日本人の金融リテラシーを高めるという使命に目覚めました。
まだ学生をしている子もいれば社会人として働く子、結婚して出産してママになっている子もいます。その時に思ったんです。
「日本人の金融リテラシーを上げないと、子どもたち将来にもかかわる。保険を売ってる場合じゃないぞ!?」って。
学校では教えられない"本当に大切なこと"を伝え続けられる人であるために、私は独立したんです。
── いよいよ本題に突入ですが、私たち日本人はこれから、どのようにして金融リテラシーを高めていけば良いのでしょうか?
希京:まずは「木」ではなく「森」という全体を見ることが最初のステップになります。
多くの人は簡単に儲かりそうな話、面白そうな投資案件を探そうとする傾向があるのですが、そのもっともっと前段階での「投資と投機のちがい」から学ぶ必要があります。
全体像の「森」を知らないと、いざ「木」である株や不動産投資、債券などの金融商品を選ぼうとした時に、偏った選択をしてしまうんです。
私は日頃からセミナー活動を通して金融についてのお話をさせていただいておりますが、私が話すテーマは「資産形成」であり、資産運用のちょっと手前ぐらいからお話しています。
「日本人はなぜお金を現金のまま持っているのか?」「保険で運用ってできるの? できないの?」
というところから、基礎知識を学んでいただきます。
── 資産形成については、いつぐらいから考えていけば良いでしょうか?
希京:若ければ若いほどいいです。どっちかというと、高校生にもう教えたいぐらいです。特に大切な「複利」については、概念だけでもこの時期に知っておくことができたらと思いますね。
お金の問題って死ぬまで、下手したら死んでからも関係することなので、そういう意味では「高校生で複利」を学ぶためにも、その前段階から金融に対する興味がある状態が望ましいと思います。
どういうことかというと、結局は「親の金融リテラシー」がそのまま子どもの金融リテラシーにつながるんですね。
親の姿勢をみて子どもは育つので、金融に限らずですけれど、お父さんお母さんが頑張っている姿や、夫婦でお金の話をしているところを子どもに見せるとか、そういうのが大事だと考えています。
夫婦でどういうお金の管理をしているのかとか、どれぐらい資産を持っているのかとか。家族でもそういうのを言いたがらないってあると思うんです。夫婦でもお互いがいくら持っているのかを知らないとか。
フラットにオープンに話ができる現場、空間を作っておくと子どもの常識が変わるんですよ。お金の話なんて…と思っている人は若い世代でも今の日本ではまだまだ多いので。
年代別、金融リテラシーを高める方法
── 子どもたちの年代別に金融リテラシーを伸ばす方法、みたいなものがあれば教えてもらえますか?
希京:小学5~6年生ぐらいであれば、おこづかいをもらっている年頃だと思うので、おこづかいの中から先に、毎月一定額を天引き貯蓄して、余ったもので生活するということをやっておくといいですね。これは大人になってからもできない人が多いので。
中学生になっても基本は同じで良いと思います。ただ、それに加えて『金持ち父さん、貧乏父さん』(著:ロバート・キヨサキ)を読んで欲しいかなって思います。
今ならYouTube で「10分でわかる」って検索をすると、本の要約された動画などが見つかるので、まずはそれでも良いと思います。
ただ、本を読むことも大事なんです。本一冊の中で著者がどういうことを考えていて、何を言いたかったのかっていうのを知り、そこから自分に必要なこと、大切に思えることを拾う。10を知って自分で1や2をピックアップする能力ってこれから益々大切になると思うんですよ。
これからは色々ある情報の中から、自分の頭で考えて、自分で情報をピックアップして、それで行動していかなきゃいけないという時代がさらに加速することは容易に想像できます。
女性向けだったら『リッチウーマン』という本があります。ロバート・キヨサキの奥さん(キム・キヨサキ)が書いた本です。
女性目線から、女性の人生って長くて、複雑で、だからこそファイナンスの教養を身につけることがとても大切だということが伝わると思います。
また、女性が出す一万円も、男性が出す一万円も、妊婦さんが出す一万円も同じ”一万円”に変わりないから、女性に不利な部分がないのが金融の世界でもあります。
トマ・ピケティの『21世紀の資本』は、有名な『r>g』(アール・大なり・ジー』という公式を説明した名著。
ぜひ知っておいて欲しいですが、これはちょっと分厚い本なので、この公式が言わんとすることだけは抑えておいて欲しいなと思います。
高校生になったらいよいよ「複利を学べ」という時期ですね。
一番簡単なのは野村證券さんの【資産シミュレーター】に色々と数字を打ち込んでみることです。
野村證券の資産シミュレーター
みらい電卓「積立編」
https://www.nomura.co.jp/hajimete/simulation/
例えば、月1万円ずつ、年利7%ずつ運用して、20年積み立てるといくらいにあるのか?
見やすいグラフなども出るので、そういうのを自分でいろいろと入力して「複利」とはどういうものなのか? というのを知ってほしいですね。
※毎月1万円を年利7%で20年間積み立てると、20年後には元本が240万円で、運用収益との合計が507万円になる
7% っていう数字は、ITバブルやリーマンショックなど様々な経済事象が起きてはいるが、この200年間株価は平均7% で成長していることから出しています。
ここからわかるのは、複利の資産形成能力ってすごくないですか? っていう話で、雪だるま式に増えていきますよね。複利って、10年、15年、20年目からグッと上がるんですよ。
── 高校生ぐらいになると現実的なお金の話になってきましたね。これが大学生やそれぐらいの年齢になるとどうでしょうか?
希京:実際に資産運用を始めることが大切だと思います。一番ローリスクで手堅いのは投資信託だと思うので、基本的なローリスクだけどローリターンの確実なところを運用していく。
それが運用できて回ってきたら今度はリスクを取れるように配分していく。バランスが大事なんです。
資産形成期は、ローリスクから着実に資産を形成していくこと。間違っても今まで貯金してきた数百万円を勉強もせず、いきなりハイリスクな投資に全額お金をかけるなんてことはしないでくださいね(笑)。
忘れてはならない投資の基本は、長期・少額積立・分散です。
ということは、大学生のうちから手堅く始めて、社会人になったら運用に回すお金を増やすなど、とにかくリスクとバランスのコントロールが大切ということになります。
私は、お金に関しては痛い目をしてまで勉強をする、ということはさせたくないという考え、方針なんです。
何がその人に、どういった影響を及ぼすかっていうのはその人自身の問題だからなんともいえないですけれど、あくまで私個人の考えとしてはということです。
これから伝えていきたいビジョン
── いざ投資を始める、資産運用を始めると考えると「正しい情報、有益になる情報はどこか?」という疑問も生まれると思います。
希京:そこで必要になってくるのが「IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)」だと考えています。これからの時代的にも求められていると思うんです。
かんたんに説明すれば、年齢や資産状況など、さまざな要素を加味して中立の立場で相談できる専門家のことです。
私自身もそこにビジョンを持って活動をしていますが、少しずつ日本でも認知の広がっているIFAですが、総数として本来の機能がどれぐらい果たされているのかというのは難しいところでもあります。
あくまで中立的な金融のアドバイザーで、ノルマのために顧客志向ではない営業をしない組織が拡がることがこれからの日本の金融リテラシーの向上にもつながると考えています。
これは私がBJ(ビューティージャパン・コンテスト)のプレゼンでも伝えたきたことのひとつです。
── IFA が本来の活動をしていくために、希京さん自身はこの業界の中でどのようなアプローチを考えていますか?
希京:学校を作りたいと考えています。イメージとしては「We Work 」のニューヨークが作った「We Grow」に近いです。
参考:WeWorkが学校WeGrowをスタート! – 丸の内で働く女性コンサルタントのブログ
このイメージの “ファイナンス版” を作りたいなと思っているんです。
そのための道筋についてはまだまだ考えるべきところが多くありますが、着実に協力してくれる周りの方々とプロジェクトを進めています。
最近は、公教育に教えに行けるような講師の養成を視野に入れながら動いています。
女性の生き方「私の想いと行動指針」
── 非常に精力的に活動されている希京さんですが、そのエネルギーの源泉にも最後、少しだけ触れていきたいと思います。ほかにはどのような活動をされていますか?
希京:活動のひとつにはモデル活動もあります。といってもこちらは、インスタグラム上で活動するフォトグラファーさんとDMでやりとりしたのをキッカケにご依頼が増えたという流れでした。
※ PhotoVogue(イタリア発のギャラリーサイト)に上記の写真が載ったことがモデル活動の始まり
── インスタグラムのコンサルティングもしているということでしたが、そちらはどのような経緯なのでしょうか。
希京:こちらは「タイムチケット」というサービスを利用して提供しています。
先日も「タイムチケットアワード2019」というイベントの中で、現在販売中のチケット総数、30,000枚を超える中で、私のインスタコンサルのチケットが「優秀チケット賞」を頂きました。
── そんな中で、2019年7月に行われた「Beauty Japan 日本大会2019」ではグランドファイナリストとして出場し「ベストキャリア賞」も受賞されていましたね!
希京:その前段となる「Beauty Japan 東京大会2019」では優勝をさせていただき、日本大会へ出場することができました。
東京大会の時は何がなんだかわからないままあっという間でしたが、日本大会に向けての活動の中では本当に多くの人に支えていただきました。
私以上に周りの方が盛りあがっていたかもしれません(笑)
Beauty Japan 日本大会を終えて思うこと
── BJ(ビューティージャパン)という大きなイベントを終えてみて、現在はどのような心境ですか?
希京:同い年でもみんな全然ちがう。考え方が幅広いし、多様な価値観と感性を持って生きている。それが感じられた期間でした。大会当日だけでなく、それに向けての日々のレッスンや仲間との交流を通じて感じたことです。
世の中には色んな意見や考え方があるよねっていうのはよく言われてることだと思うんです。でもそれが、本当の意味で腑に落ちたというか。こういうことなんだなって肚落ちしましたね。
みんな違う方向を見ていて、目指しているものも違うかもしれないけど、それでも私たちは仲間とお互いに思えるというか。そういう存在に出会えたことがとても嬉しいです。
宮尾リョウコ先生からもウォーキングのレッスンを通して、「自分ってこういう風に見えるんだ」という、みんなのカラーが生きているのを感じられるような時間を過ごすことができました。
どうすればその人の良いところを見つけ、引き出すことができるのか。そういったことに長けている先生という印象でした。
── 私(宮尾)のレッスンの特徴で印象的なことは何かありましたか?
希京: 宮尾先生の人柄については、「信頼できる女性」だと感じました。ちゃんと思ったことを言ってくれる部分が特に。
良くなかったらよくないって言ってくれるし、良かったらいいってすごく言ってくれる。
レッスンに関してもよくあるケースというのが、何かに対してこれをやれって指示されて型に当てはめられる、それができなければ外される、っていうトップダウンの形式が一般的にあったりしますよね。
でも宮尾先生はその反対で、その人の良いところを見つけて、そこがどういう風にステージで映るのかっていうのをすごく一緒に考えてくれたんです。
私が本番当日、リハーサルの時にステージから落ちて足をケガするトラブルがあったのですが、その時に私がイスにも座れず地べたに座っていたら、出場メンバーの仲間たちも一緒に床に座ってくれて。
あれは本当に涙が出そうになるぐらい嬉しかった。
こういったことはレッスン中にもたくさんあって、私はたいして身体がやわらかくもなく、そんなに自信もあったわけじゃないんですけれど、先生がいつも「大丈夫よ」って、いつも褒めてくれて。
そういったことも自信につながっていきました。
読者へのメッセージ
── では今回のインタビューの最後に、当メディアのテーマでもある「美」について、本気で美しくキレイになりたい、変わりたいって思っている女性にメッセージをお願いします。
希京:誰にでもみんないいところがあって、誰にでも光るところがあるんですけれど、それって自分で見ているだけだとわからなくて。自分がいいところって自分で見えなかったりしますよね。
BJを通じて、年齢の近い、でも生き方も考え方もちがう、仕事もちがう、目指しているものもちがう、その中に入ることによって見えるものがあるし、気づくこともある。
成長することもあるし、引き出してくれる宮尾先生の存在もあります。
こういった中で触れるからわかることがたくさんあります。だから一歩を踏み出してほしいなって思います。中に入ってみなきゃ見えないものっていうのが、やっぱりあると思うんです。
Beauty Japan に限定する必要はありませんが、何かにチャレンジしたいという気持ちがあれば、ぜひ挑戦してみてください。これが私からのメッセージです。
── 今日は長時間のインタビュー、ありがとうございました。
希京:こちらこそ、ありがとうございました。