Beauty Japan 2019 日本大会グランプリに輝いた雅南ユイ(Kanan Yui)さん。
現在は、株式会社ONIGIRI Plus の代表取締役社長として、国内外を問わず大活躍をしています。
事業内容は「コスプレを用いた、総合プロモーション会社」。
コスプレイヤーのキャスティングや衣装製作、イベントの企画運営、最近ではサブカルチャー業界の企業に対してのコンサルティングも行っており、登録しているコスプレイヤー数も1,200名近くに上るといいます。
小学生時代から「ひきこもり」がちだったという雅南ユイさん。
今回はBJ(ビューティージャパン)に参加した経緯から、現在の仕事を始めるまでのエピソードなどを伺いました。
ヒキコモリ出身、コスプレ会社の女社長
── ユイさんの個人メディアを拝見すると、「ヒキコモリ出身、コスプレ会社女社長」というフレーズが印象的でした。
ユイ:小学生の頃から学校をすぐ休んでは、家でアニメを見ているような子どもでした。特に中学生1~2年生の頃がひきこもりのピークで。
ちょうどそんな時期に、ミニ四駆がテーマの大好きなアニメと出会うんです。
それがキッカケで、コスプレというわけでもなかったのですが、主人公の男の子と似たような服を着てみたことがあったんです。
そしたら、それがすごい楽しくて。
服を変えたり、小さくてもいいから自分で行動することによって、人はちょっとずつだけど変わることができるってわかったんです。少しずつ、すこーしずつですけれど。
まさに「ひきこもりだった私」を変えてくれたのがコスプレだったんです。
── そこから個人の趣味ではなく、会社を立ち上げようと思った経緯は何だったのでしょうか?
ユイ:もっとみんなにコスプレのパワーというか、「自分が変わるキッカケ」を伝えたいなって思うようになったんです。
でも同時に、著作権の問題から「趣味」で終わってしまう現状があることに気づきました。応援したいけれど、版権元からするとグレーゾーンなので、あんまり触れたくないポジションが当時のコスプレ業界だったんです。
そういった性格の業界を変えたいなって思い、じゃあ何をしようかって考えた時に「とりあえず会社を作ろう!」と考えました。
個人だと、どこにも取り合ってもらえないことはわかっていたので。
── 起業準備などは、どの程度されたんですか?
ユイ:仕事の内容も、それこそ事業計画も作っていなくて。とりあえず形から入ろうと思い、貯金を全部崩してを会社を作りました(笑)。
そこから色々な交流会に出たり、さまざまな人と出会う中で「君は何ができるの?」と聞かれることが増えていったんです。
「私にできることは、コスプレイヤー集められること、衣装が作れること、あとはこんなアイデアがあります!」と伝え続けました。
コスプレは性別や年齢、身長、体重制限もないので担当できるキャラクター幅が広いんですよね。
衣装についても、要望を聞きながら、低価格で数日使えるような衣装を作れてしまうため需要はあったと思います。
── とはいえ、本当にゼロからスタートだったわけですね。そこからどのようにして現在の飛躍に至るのでしょうか?
ユイ:ビックサイトで毎年、新作アニメのプロモーションをするコンベンションイベントが開かれるのですが、転機になったのは「アニメジャパン」の前身にあたるイベント「アニメ コンテンツ エキスポ2013」でした。
そこでとある企業ブースの担当者の方から、「いつもはコンパニオンの人にチラシ配りをお願いをしているけど、ちょっと1回だけ、今回はコスプレイヤーを採用しようかな」とご依頼がありました。
それで衣装の準備をして、当日はチラシ配りや写真対応をしたりしました。そうしたら、すっっごくたくさんの人がブースに集まってきてくださったんです。
── 何のアニメを担当されたんですか?
ユイ:その作品がなんと「進撃の巨人」だったんです。放送開始前でもあったので、その段階ではヒットするかどうか未知数でした。だからこそいただけたチャンスだったと考えています。
結果的に作品人気は高まり、それと同時に「あのブースを担当した会社はどこだ?」となり、うちの会社の認知も広がりました。当時のブース担当者の方には本当に恩を感じてます。
そこからはもう、うなぎ登りに会社は成長していきました。
時代的にTwitter やFacebook などのSNSも普及し始め、日本でもハロウィンパーティーの文化が根付き始めた2012年の起業だったのでタイミングも良かったですね。
世の中に対するギモンをぶつけ続けた10代、20代
── ここまでお話を聞いて率直に思うのですが、本当にすごい行動力ですね!
ユイ:社会人になるまでは自分の意見もまだうまく言えなかったのですが、高校生の時に先生と大ゲンカしたことがありました。
「単位が足りないから、お前はもう留年だ!」って言われたんです。その時に私、めっちゃ抗議したんですよ。
「なんでお金を払ってるのはこっちなのに、留年するかどうかを学校側が決めるんだ。そんなのは、上手にやってください!」って(笑)
── そ、それは斬新ですね…。
ユイ:しかもそれを三者面談の時に言ったので、先生も何も言えなくなってしまうという(苦笑)。
別のエピソードで、コールセンターのアルバイトをしていた時にも会社に対してすごくギモンを持ったことがありました。22歳ぐらいの話です。
こちらからかける側ではなく、受信する立場のコールセンターです。なので電話が鳴らない限りはヒマなんですよね。「これ、何のために私はここにいるの?」って感じで全然モチベーションが上がらないんです。
その割には「ぼーっとしてないで仕事しろ!」って上から言われたりして、「いやいや、電話が鳴らないんだから何もできないですよ!」の繰り返しでずっと不満でした。
── ギモンを持って抗議して。そのあと何か変化はあったんですか?
ユイ:職場の中に、仕事の全体像を教えてくれた先輩がいたんです。それを聞いたら自分が業務の中の何を担当していて、じゃあ何が足りてなくて、何をすればいいのかがわかるようになりました。
「こうしましょう、マニュアルを作ってみてはどうでしょう、こういう仕事のやり方もあると思います!」ってそれ以降は提案ができるようになり、気づけばどんどん上のポジションへと上がっていきました。
── その先輩の影響は大きかったですね。
ユイ:結果として、その頃の経験は今に生きているのかなって思うんです。
自分のギモンを伝えることの大切さ、
自分の気持ちを伝えることの大切さ。
自分のギモンって他の人のギモンかもしれない。
それを変えたり、変えるキッカケを作ったり、逆にプラスに持って行ったり。それが「仕事」になるわけですから。
先ほど話したコンベンションイベントでの成功から会社も大きくなり、支えてくれるコスプレイヤーの女の子たちも1,200名を超えたんですが、今ではその子たちが仕事を取ってきてくれるようになりました。
営業しなくてもお仕事が入ってくるようになったんですよね。口コミと女の子たちの営業で全部広まっていて、そういうところで今はすごく支えられています。
そこで私が大切にしてきたのは「仕事の全体像を教える」ということでした。
1,200人のメンバーから応援される会社へ
── 先ほどのお話、登録しているコスプレイヤーの方々が仕事を取ってきてくれるってすごいことですよね。そういう契約を結んでる?
ユイ:いえ、全然そんなことはないんですよ。
コスプレイヤーの女の子たちも、個人でお仕事を受けることだってできると思うんです。でもやっぱり会社を通した方が安心ですし、自分のキャパシティを超えた内容のお仕事を受けることもできますよね。
何より、自分を支えてくれてる会社にもメリットがあるようにって動いてくれることが多いので本当に助けられています。
── 自分と会社の関係を理解して、行動できるってすごいことですよね!?
ユイ:私の考えなんですけれど、それって先ほどの「仕事の全体像」の話だと思うんです。会社の仕組みや中身をちゃんと教えてあげれば、みんな理解できると私は思っているんです。
今の日本の会社にありがちなんですけれど、縦割りの社会なので、例えばABCDのセクションがあったら、AのチームはAのことしかやらなくていいからみたいな。
BCDが何をやってて、どういう風に時間を使っていて、それがAに対してどう関わってくるかっていう仕組みをきちっと教えてあげる必要が本来はあると思うんです。
── 違う部署の仕事には干渉しないっていうこと、ありそうです…。
ユイ:全体がわかれば、自分たちがやっていることの意味も理解できるし、誰をどうやってサポートしてあげればいいかも自然と見えてくるはずで。
なので私たちの仕事は、みんなを主役にするイメージでやっています。
チラシ折りなど、誰にでもできる仕事であっても「君が早いから君に任せたよ」ってリーダーにしたりとか。
そういう風に任命されると、その子だって頑張れるじゃないですか。すると会社に行くことが楽しみになって、自分にとっての居場所にもなるんですよね。
結果、会社への愛も強くなるので、そういうのをひとつでも多く作ってあげるっていうのが私のポリシーとしてあります。
BJへの参加理由は「井の中の蛙」と感じてしまったから
── すでに活躍していたユイさんですが、なぜBJ(ビューティージャパン)コンテストへの参加を決めたんですか?
ユイ:井の中の蛙だなと感じてしまったからです。
私はこれまでにコスプレ業界、アニメ業界、サブカルチャー業界で実績を作ってこれたことをとても嬉しく思っておりますし、皆様にもとっても感謝しております。
皆様に凄いと言っていただけるのは有難く思っているのも確かですが、その「安心感」こそがギモンでした。
その業界から出た時に自分はどういう風に見えていて、何に挑戦していけば自分というものをもっと磨き上げていくことができるのか、世界に対応できる人間になっていけるのか、ということに関心がありました。
その中でたまたまBJコンテストを見つけて、1回応募してみようと思ったんです。
── その結果、見事、BJ日本大会ではグランプリを取ることができましたね。
ユイ:優勝できるとは思っていませんでした。でも優勝してみたことで、コスプレ業界を知らない人たちからも評価していただけるのだと実感することができ、とても大きな自信になりました。
一方で、優勝者っていうのは次のBJコンテストの看板にもなるわけで、来年参加する後輩の子たちに恥ずかしい背中を見せないように頑張ろうと、より気持ちが引き締まりましたね。
── 今回のBJコンテストを通してレッスンやセミナーなどもありましたが、それらを通して何か変化はありましたか?
ユイ:リョウコ先生を見ていて思ったことなんですけれど、一般的な先生とは違うなということを感じました。肩書きは先生なんですが、先生ぶろうとしていないというか。
みんなで一緒に上に行きたいから、私はまとめるポジションで支援するからね、というのを上手に自分で演出しているところをみてスゴイと思いました。
そういうところ、大事だと思います。
それはBJを運営する方々もそうですし、他の講師やコーチの方もそうで、みんなで作り上げてる印象でした。だから立場が上の人間にも意見がしっかりと届く。
どんなに意見をしても「お前はただのグランプリだろ」というような言い方をされたことは一度もなく、その温かさはこのBJコンテストを通して学び続けています。
挑戦する人へのメッセージ
── 最後の質問になりますが、BJに参加しよう、何かに挑戦しようと考えていらっしゃる方へ向けて、何か応援のメッセージをいただけますか?
ユイ:とりあえずは、まず動くこと。
100%を目指すんじゃなくて、20%でもいいから前に進むことが必要だと思うんですよね。だって最終的にお墓には、お金も友達も、家族だって持っていけないわけですから。
その時に失敗したくないとか、誰からどう思われるんだろうって考えるのではなく、めっちゃ面白い人生を送れたなっていう風に自分でライフイベントを作ってあげるっていう考え方をするといいんじゃないかなと思います。
人間って、一歩を踏み出さないと動かないんですよ。そういう怠惰な生き物なので。
だからこそ私は「まず動く」ということを心がけていますし、これから何かに挑戦したいと考えている人にも伝えたいなと思います。
ノリで動くって、実はけっこう大事なんです。
■株式会社ONIGIRI+(オニギリプラス)
日本初のコスプレ専門会社です。国内外のコスプレイベント企画・開催に加え、従来はコスプレをするアニメやゲームなどの作品に関する権利によってビジネスマッチングが難しいとされてきたコスプレーヤーの【キャスティング】、各界への【プロモーション】など、事業を通じて日本のコスプレ文化のさらなる発展に取り組む。
■雅南 ユイ(Yui Kanan)
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